ワクチンとフィラリア予防について

マザーレイクのコリーの子犬のオーナー様にご説明している、ワクチンとフィラリア予防についてのページです。(他犬舎の子犬のオーナー様は、各出身ブリーダーさんの指示に従ってください。)

混合ワクチン

混合ワクチンは法律で接種が義務付けられている狂犬病ワクチンとは別の物です。接種については任意ですが、犬の感染症を減らすためにも、強く接種することをお勧めします。

混合ワクチンには複数のワクチンが含まれていますが、その種類(数)により、一般的には5種~9種があります。数が多いほど、予防できる病気が多いわけですが、それだけ負担も大きいということになりますので、環境や年齢を考慮して、どのワクチンを接種するか決めてください。当犬舎では8種を推奨しています。

1回目のワクチンは70日目くらいまでに接種しましょう。
母親から受け継いだ移行抗体(免疫)はおよそ生後60日くらいまで残っているので、ワクチンは60日目を過ぎてから接種するのが効果的です。母体から受け継いだ移行抗体が体に残っているうちは、外からワクチンを打っても、その効果は打ち消されてしまうのです。ワクチンは早く接種しすぎても、効果がないばかりか、アレルギー体質を招きやすいと言われています。また、かえって免疫力が弱くなるという調査結果も出ています。

ワクチンは薬ではありませんので、接種したからと言って、すぐに効果が表れるわけではありません。個体差がありますが、2週間から3週間かかるといわれています。譲渡直前に、移動の時に心配だからとワクチン接種を要望される方がいらっしゃいますが、直前の接種はかえって体調を崩す要因にもなります。

ワクチンを接種後、通常は2~3週間後に抗体ができて免疫力が付くわけですが、子犬の場合はより慎重に、安定性を求める意味で更にもう1回、接種をします。早ければ1回目のワクチンから3週間経過していれば2回目を接種できるのですが、多くの動物病院では1回目から1か月後の接種を勧めています。

最近、ワクチンは3回接種をすすめる病院が増えました。私としては、2回でも十分だと思います。ただし、1回目のワクチン接種が早くて効果が無効になっている可能性がある場合は、念のため3回接種した方が良いかもしれません。

2回目(あるいは3回目)のワクチンが終わり、2~3週間が経過したら、いよいよお散歩デビューができます。ただ、それまでの間はどこへも連れて行ってはいけない、外に出してはいけないという事ではありません。仔犬の精神的な成長のためには、安全な場所を選んで、できるだけ外の世界に連れだしてあげましょう。たとえば、ワクチン接種など、ちゃんと健康管理ができている犬を飼っている知人宅などへ連れて行き、犬同士で遊ばせてもらうなどしてください。不特定多数の犬が散歩をするような場所でなければ、遊ばせても構いません。

2回目(あるいは3回目)のワクチン後、1年が経過したら、再度ワクチン接種をします。成犬になったら1年に1回の接種をすることになります。多くの動物病院では、その頃にハガキやメールで連絡をしてくれます。

老犬の場合、健康状態を獣医師と相談しながら、接種するかどうか決めます。8種ではなく、5種にするなど、できるだけ負担を少なくする方法を選択してください。

ワクチンを接種した当日は、いつもより安静にしているようにしましょう。大暴れして、体温が上がりすぎたりしなければ大丈夫です。
まれに、ワクチン接種の後、アレルギー反応で顔が腫れたり、痒がったりすることがあるようです。(今のところ、当犬舎では経験がありませんが。) 接種後、半日程度は注意していてください。念のため、ワクチンはできれば午前中の診察でお願いした方がよいです。

もちろん、ワクチンを打っておけば、いろんな病気にかからなくなるなんてことはありません。むしろ、ワクチンでは予防できない病気の方が圧倒的です。犬の風邪とも言われる、ケンネルコフなどはワクチンでは予防できません。不特定多数の犬が集まるイベントでは、むやみに他の犬と接触させない方が安全です。もっとも危ないのはドッグショーです。

最近、高速道路のSAにドッグランが設置されていることが多くなりました。とても良い事なのですが、糞便を介して伝染するような病気が発生すれば、あっという間に広範囲に広がってしまう危険性があります。子犬や老犬は立ち入らない方がよいかもしれません。
例えば、コクシジウムという原虫は成犬では無症状の事が多いのですが、子犬では重篤な下痢を引き起こします。便を片づけたとしても、わずかに残っていれば、それを踏んだ足に付着します。コクシジウムは一般的な除菌剤では死滅しませんし、ワクチンでは予防できません。
余談ですが、コクシジウムは宿主特異性なので、猫のコクシジウムは犬では発症しません。猫を飼っているからといって、不安になることはありません。

狂犬病予防ワクチン

狂犬病ワクチン接種は、法律では生後90日以上の子犬は30日以内に接種しなくてはならないことになっています。けれど、混合ワクチンと同時期に接種することは避けたいので、獣医師と相談の上、接種時期を決めてください。
春先に自治体で集団接種が行われますが、できるだけ動物病院で接種してもらってください。初回は畜犬登録も必要になりますが、居住する自治体内の病院なら、登録手続きも代行してもらえます。
狂犬病ワクチンは、老犬や病犬については免除の制度があります。獣医師と相談して、必要なら証明書を発行してもらい、届け出ます。
狂犬病ワクチンについても、注意事項は混合ワクチンと同じです。接種後しばらくは留守にせず、様子を見るようにしましょう。

フィラリア予防について

日本に住む犬にはフィラリア予防が必須です。環境によっては、予防をしなくても感染しない犬もいますが、一般的な住宅地で暮らしている犬は、予防をしなければほぼ100%感染すると思っていいでしょう。

感染した場合、早ければ3~5年でフィラリア症になり、死に至ります。一旦フィラリアに侵されると、初期ならば投薬により駆除できますが(多少危険がともないます)、中期以降は外科手術しかありません。末期には打つ手はなく、多くは腹水がたまり、苦しんで亡くなります。

フィラリア症は恐ろしい病気ですが、投薬によりほぼ100%予防できます。フィラリア症は蚊によって媒介されます。ですので、蚊がいる時期のみ、予防のための投薬をします。夏生まれの子犬は1回目のワクチンの頃から予防のための投薬を始めます。その後、おおむね1ヵ月毎に投薬し、蚊がいなくなるまで続けます。そして再び蚊が出始める4~5月あたりから投薬を始めます。当犬舎は温暖な地にあるので、フィラリア予防は毎年4月から12月までとしています。

現在、フィラリア予防薬には多種多様あり、従来の錠剤の他、多く使われているのはジャーキーのようなオヤツタイプです。また、ノミ・ダニ予防を兼ねたスポットタイプ(皮膚に滴下し塗布するタイプ)も多く使われるようになりました。
どのタイプでも良いのですが、問題なのは使用されている薬品です。コリーには副作用が強くでる薬があり、その代表的なものに、フィラリア予防薬として多く使用されているイベルメクチンがあります。
遺伝的に、イベルメクチンに対して副作用が出ないコリーもいますが、遺伝子検査をしないかぎりわかりません。そのため、コリーであればイベルメクチンは絶対に投与しないようにした方が安全です。ジャーキータイプの中にはイベルメクチンを使用している商品もあり、誤って処方される危険があります。商品名ではイベルメクチンを使用していることがわからないものがありますので十分注意してください。

当犬舎で使用しているのはモキシデクチンです。商品名はモキシデック(錠剤)です。食欲旺盛で、フードと一緒に薬を飲みこんでくれる子なら、錠剤タイプが確実ですのでお勧めしています。
フィラリア予防薬の多くは成虫も駆除します。そのため、万が一感染している犬に投与した場合、死んだ成虫心臓の血管に詰まる危険性があります。フィラリア予防薬開始の前に、血液検査をするのは感染していないことを確認するためです。モキシデックはフィラリア成虫には効果がありません。それゆえ、万が一フィラリアに感染していても、投薬による事故は起こりにくいとされています。

錠剤タイプには他にミルベマイシンAがあります。ミルベマイシンAはフィラリアだけでなく、回虫なども駆除できるため、広く使われています。コリーに対する安全性も適量ならば確認されています。適量というのは、過剰に投与した場合、副作用が出る可能性があるということですので、薬の管理には十分注意しましょう。
また、ミルベマイシンをより安全に投与するためには、必要最低量で投薬する方法があります。この場合は回虫駆除は望めませんが、成犬においては回虫はあまり問題になりませんので、無視しても良いと思います。
例えば、体重6キロの子犬なら、通常は5キロから10キロ用の錠剤が処方されます。けれど、ミルベマイシンはフィラリア駆除だけを目的とした場合、遥かに低い薬量で効果がありますので、5キロ以下の錠剤でも問題ありません。

以前、当犬舎でもミルベマイシンを投与していましたが、前出のように体重6キロの子犬に5~10キロ用の錠剤を処方されたので投与したところ、嘔吐やふらつきといった中毒症状がでました。個体によっては使用範囲内であっても副作用が出ることもあるので、できるだけ低薬量で与えるようにした方が安全です。
ただ、最近はジャーキータイプやスポットタイプが人気なため、錠剤を置かない動物病院もあるそうです。その場合は獣医師にコリーの薬剤に対する特性について確認し、安全が確認されている薬を選択するようにしてください。

子犬の場合は体重が変化しますので、面倒でも毎月病院に行き、体重を測定した上で処方してもらってください。成犬になれば、1シーズン分まとめて購入することが可能です。
もし、投与後に嘔吐してしまった場合、すぐに投薬はせず、数日後にあらためて投薬してください。投薬は1か月に一度、毎月同じ日にというのが望ましいのですが、体調などにより、数日遅くなっても大丈夫です。

ノミ・ダニ予防

ノミ・ダニ駆除薬の多くは皮膚に滴下するタイプ(スポットオン)です。薬剤が皮脂を通じて全身に広がるタイプと、皮膚から吸収されるタイプがあります。フィラリア予防薬と一緒になっているタイプもあります。
ノミ・ダニ駆除薬はノミやダニがつかなくなるというわけではありません。それらが皮膚に到達し、吸血する際に駆除しますので、付着しただけでは死にません。叢などに入ると毛の表面にダニがいっぱいくっついてくることがあります。付着を防ぐためには、天然素材の虫除けスプレーを使用すると良いです。
薬のタイプによっては、皮膚が弱い犬には使用できない事があります。また、効果は一定ではないようで、効果があるとされる期間の前に効果がなくなることもあるようです。
新しい商品が次々と出ていますし、海外からの輸入品なども多いので、購入の際はコリーに対する安全性を獣医師に必ず確認するようにしてください。ペットショップやホームセンターのペットコーナーで販売されている商品は殺虫剤と同じ成分のものがありますので、必ず動物病院で購入するようにしてください。
当犬舎で使用しているのはフロントラインプラスですが、皮膚が弱い犬では一時的に皮膚が赤くなります。